今回の事故だが、過去40年間で最悪の鉄道事故となった。事故後間も無くの記者会見では情報が錯綜し、発表される情報が猫の目が如く変っていった。そのことからも今回の事故がどれほど甚大なものか読み取る事が出来るだろう。発表される内容は犠牲者の数を始め、レールに残された破砕痕の有無、電車のオーバーラン、速度超過の乗客の証言などの原因究明に必要な情報のほか、事故当時の生々しい状況を語る被害者の映像と言葉。
この段階で思ったのはメディアは何故、無傷な人間を選んでインタビューしないのか…と言うことだった。自分が見たのは三角巾で腕を吊るし、頭部の裂傷からの出血をガーゼで拭きながらインタビューに応える男性の姿。事故の凄惨さを伝えたいなら、原形を留めていない程に大破した電車の状況を見せるだけで十分に伝わる。一刻も早く精密検査を含めた治療を受けなければならない人間から証言を取る理由がどこにあるというのだろう。個人的にこれは“報道のエゴ”だと思った。一刻も早い事実を伝えるのが報道の本分とは言え、これが原因でその人の人命に関わる事態に陥ったら、メディアはどう説明し責任を果たすのかを聞いてみたい。災害報道は、その災害に影響が及ぶだろう人々に情報を与えることこそが意義があると思う。凄惨さを伝えるために、一刻も早く安心したい被害者の人命、感情を無視した報道には人間として疑問に思う。(関連リンク『ガ島通信 福知山線で列車事故』/『探偵ファイル 【独占】尼崎脱線事故の事実 〜被害者語りき〜』)
神戸新聞のWEB版によると、事故車両は現場カーブ(70km/h制限)を約108km/hで侵入し、それが今回の事故へ繋がった可能性が高いと見て、警察が調査している旨の記事を掲載している。正直なところ、今の段階でより真実に近い事実を導くのは難しいだろうと思う。先ずは現場で未だ続く救助活動が最優先であり、レールに残る脱線の痕跡や車両の破壊程度といった力学的な計算など、様々な角度から分析しなければ事故の真相に近づく事は不可能だからだ。
現時点で分かっている事実は、速度超過であった事実、オーバーランの事実、運転士と車掌が口裏を合わせて虚偽の報告をしていた事実、運転士が過去にも同じミスを繰り返していた事実、そして事故の2週間前に尼崎発着の全列車を対象にした厳しい遅延調査を行っていた事実(リンク:Yahoo社会ニュース 毎日新聞記事)。
これら現状での事実を踏まえた上で思ったのは、日本の社会の窮屈さである。日本の公共輸送機関が世界に誇るのは“正確な時間で運行”されることである。だが裏を返せば、その公共輸送は時間という名のプレッシャーとの闘いでもあると言える。
品質保持、この件の場合だと正確な時間で運行するということになるが、そのためにリスクを冒す必要があるのだろうか?たかだか1分の遅れが懲罰に値することなのだろうか?運転士が過度なリスクを負う運行をした事実は変わらないが、その背景には会社側の融通の利かない社内規則も影響しているのではないだろうか…と思う。そして公共輸送機関を利用する人々も完璧を求めすぎているのでは…とも思う。ほんの僅かな遅れで個人に不利益があるならば、それは利用する側のリスクマネージメントに問題があるのでは…と。不測の事態を考えてスケジュールを立てられない人間が、公共輸送機関の品質を逆手にとって文句をたれているのも事実。広い目で見れば、企業側も消費者に品質を問われそれを過度に優先し対応し続けた結果、息苦しく余裕の持てない社会状況を作り上げてしまった気がする…危険を回避するには、せめて判断するために考えるだけの余裕は必要だ…昔から“急がば回れ”と言うではないか。
JRのみならず、大量公共輸送に従事する人々へ問いたい。
あなた方は品質と人命のどちらが大事なのか。例えが悪いが、集合住宅への放火や列車往来妨害で死傷者がでた場合、その犯人は最大級の刑を求刑される。犯罪か経済活動かの違いはあれど、一瞬にして大量の人命を奪うことに変わりは無いのでは?
ヒューマンエラーを防ぐには“何が必要で、どう改善すべきか”。それをもう一度考え直す時が来ていると思うと同時に、企業も消費者も“先ず人ありき”の言葉の意味を考えて、それを肝に命じておくべきだろうと思うのである。
Yahoo社会ニュースより抜粋(共同通信)
時速100キロ超で脱線 ブレーキや石粉砕痕なし
兵庫県尼崎市のJR福知山線で25日朝に脱線した快速電車は、現場の右カーブに時速100キロを超えるスピードで進入したことが26日、尼崎東署捜査本部の調べで分かった。現場の制限時速は70キロで、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は同日、現場でブレーキ痕や石の粉砕痕を確認できなかったと発表。電車は猛スピードでカーブに突っ込み、脱線して線路脇のマンションに衝突した疑いが強まった。
また県警などは同日午後、大破した1、2両目の車内に閉じ込められた乗客の安否を人命探査装置で確認。14−15人がいるとみられるが、生存反応はなかった。
調べやJR西日本によると、脱線時の時速は走行速度を自動的に記録する「モニター制御装置」を電車から回収し、捜査本部が分析。制限時速を大幅にオーバーしていたことが分かった。
(共同通信) - 4月26日20時56分更
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様々な原因が重なり合って起きた事故だと思いますが、たった数分の時間の遅れよりも、人の命の方がはるかに尊重されなければなりません。
この電車の運転手は、多数の人命を一手に握っているという自覚がなかったのかもしれません。
本当に凄惨な事故でした。
犠牲者のご冥福を祈ります。